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首藤康之、封印された踊りが解かれるとき
『Bolero』
首藤康之、封印された踊りが解かれるとき
一昨年、他界したダンス界の巨匠、モーリス・ベジャール。
その追悼公演で首藤康之が、師へのオマージュをこめて、一度は封印した踊りを解く―
『ボレロ』という不思議な作品にこめられた思いとは?

振付家モーリス・ベジャールの代表作『ボレロ』は、不思議な磁力を放つ作品だ。蠱惑的なモーリス・ラヴェルの音楽にのって、赤い円形テーブルの上でダンサーが延々とステップを踏み続けるうちに、その姿を見つめる観客までをも恍惚感で包み込んでしまう。ジョルジュ・ドンほかの錚々たるダンサーが踊り継いできたこの作品に、弱冠20歳だった首藤康之は初めて挑んだ。
「ベジャールさんが東京バレエ団で創った『M』(一九九三年初演)の稽古中のことでした。僕が演じる聖セバスチャンのソロ場面を振り付けていた時、突然、彼は僕の手を取って、こう言ったんです。手も指も長いから『ボレロ』を踊ると良い、手の勉強になるから、と。その後も、振付は覚えたかと何度も訊ね、『M』の初演後には、次は『ボレロ』を踊りなさい、と。その当時、彼自身の意向で『ボレロ』の上演を封印していたので、僕は訳が分かりませんでした」
小説家、三島由紀夫の生涯をモチーフにした新作『M』で重要な役どころの聖セバスチャンを踊りきった首藤は、やがて『ボレロ』を踊り、まばゆい若さとミステリアスな憂いを融合させた、見事な舞台を作り上げた。
「ベルリンで初めてリハーサルをしてもらった時、ベジャールさんに言われたのは、テクニックのことばかりでした。ジャンプの高さ、脚の高さ、爪先の位置、脚の角度。他の作品の稽古でもそうでしたが、役柄や表現に対してどうこう言われたことはあまりなく、演じる余白を与えてくださった。本番では本能に従って踊るように、とも指示されました。それなのに、リハーサルでは、とにかくテクニック、テクニック、テクニック----。テクニックあってこそのバレエ、という考え方なんですね。技術の不足を表現力で取りつくろうなんて、不可能です」
“お盆”こと、円形テーブルの上で踊る気分は、どんなものだったのだろう。
「振付も音楽も、すべてがシンプルです。踊ろうと思えば、誰にでも踊れるかもしれません。シンプルな作品だけに、ダンサーとしての精神、情熱、人生、パーソナリティ、その全てが押し出されてしまう。自分自身をお盆の上に乗せるしかない。実際、自分をさらけ出しているような感覚になりました。簡単、難しい、というよりも、怖かった。踊り込んで作品を知れば知る程に、充実感が湧く一方で怖さが募っていきました」
この続きは、DDD9月号 vol.36でご覧ください
















